名誉毀損やプライバシー侵害で訴えられた時、損害賠償金を減らせる?
インターネットに書き込んだ投稿が名誉毀損やプライバシー権侵害になるとして損害賠償請求されたとき、投稿内容や相手の主張から「慰謝料など賠償をしないで済むケース」や、「賠償せざるを得ないとしてもその金額を減らせるケース」はあるのでしょうか。
ここでは、インターネットの誹謗中傷で訴えられてしまったとき、損害賠償金を正当な額に抑えるためにどのような反論をすれば良いのかを解説します。
1 権利侵害を争う
インターネット上で自由に発言できることは、重要な人権である「表現の自由」や「報道の自由」のために必要です。
名誉毀損は公益目的などが認められれば適法になりますし、プライバシーに当たる情報も公開することが公共の利益になるのであれば違法な侵害にはなりません。
すなわち、誹謗中傷と思われる投稿でも、その権利が侵害されたと言えるためには(表現の自由との兼ね合いがあるため)複数の要件を満たさなければいけません。
その要件のどれかが欠けていれば、1円も賠償する必要はなくなります。
なお、投稿が違法かどうかは個別に判断されますので、権利侵害が認められる投稿が少なくなれば、その分慰謝料は減りやすくなります。
2 慰謝料相場の中で争う
ネットトラブルの主な損害賠償金は、精神的損害を償う「慰謝料」です。
そして慰謝料には事実上、裁判所の相場があります。
相手の名誉やプライバシーを侵害したと認められたとしても、その相場の中でも低い金額になるはずだと主張できる可能性があります。
⑴ 投稿内容などの悪質さ
慰謝料に大きな影響を与えるのは、やはり投稿内容です。
書き込みがどれだけ広がったかも問題となります。
ア 投稿内容
名誉やプライバシーにあたることがらの中でも、保護される程度には差があります。
犯罪デマ、性生活の暴露などは増額の原因となってしまいますが、投稿内容や公表行為に公共性・公益性があるといった事情があれば、慰謝料を抑えるよう主張しやすくなるでしょう。
イ 書き込んだ方法
同じ内容でも1回だけ書き込んだときと、ずっと何度も頻繁にあちこちのサイトで書き込んだときとでは、投稿を目にする人数に大きな差が出ます。
頻度や回数、期間、投稿先サイトの数などについて、これまでの裁判所の判断を参考に「そこまで極端に悪質なものではない」と主張することが考えられます。
⑵ 相手側の事情
投稿内容だけでなく、相手の状況次第で投稿により生じた精神的負担は変わってきます。
ア 被害者の地位や職業
相手が高い地位、公職にあれば、その情報がプライバシーとして守られる程度は薄まりやすいでしょう。
逆に名誉毀損による被害が大きくなるリスクもありますが、投稿内容次第では公共性・公益目的など違法性阻却事由が認められやすくなります。
イ 被害者の生活に現実に生じた不利益
しばしば慰謝料額を跳ね上げてしまうのが、「誹謗中傷で退職した」「PTSDになった」といった主張です。
しかし、これに対しては「投稿が原因だとは言い切れないから賠償する責任はない」などの反論も考えられます。
本当にそのような事実があるのか、特に退職・退学や精神疾患などがインターネットへの投稿が原因で引き起こされたものと言えるのか、厳しく検証して反論します。
⑶ 書き込んだ側の事情
裁判所は慰謝料を決めるにあたって投稿者の事情も考慮します。
ア 動機や目的
公共性や公益目的があったのではなく、嫌がらせ目的で誹謗中傷してしまっていたのなら、反省の態度を見せることが重要です。
イ 投稿するまでの経緯
もともとは落ち着いて議論していたがエスカレートしてしまった、あるいは相手から悪口を言ってきたなどの事情があれば、慰謝料を抑える方向に働くでしょう。
3 調査費用の請求を減らす
他人の投稿にかかった調査費用までは支払う必要がありません。
相手が契約書や請求書、領収証でまとめて調査費用全額を請求してきたら、他人の分までまぎれて請求していないか確認しましょう。
なお、通信会社から個人情報を開示してもよいかと連絡が来た際、あえて開示を認めることでも調査費用を減らせます。相手と通信会社との間の裁判にかかる費用が節約できるためです。
4 まとめ
SNSなどネットでの情報発信が一般化した現代では、誰もが誹謗中傷の被害者のみならず加害者にもなるリスクを抱えています。
しかし、インターネットへの書き込みで訴えられてしまったとしても、賠償金を支払わないで済む見込みはあります。
しかし、その判断は見通しがつきにくいものです。
どのような表現が適法なのか、また、相場の中でもいくら支払えと判決されるリスクがあるのか、法律の枠組みと多くの裁判例の知識、それらに基づいて実際のケースで助言を行える判断力を持っているのは弁護士だけです。
もし、自分が書き込んだ投稿について損害賠償請求されてしまったときは、一度落ち着いて、弁護士にご相談ください。
裁判所が賠償を認める可能性や、相場に応じた慰謝料額の見通しなど、これまでの裁判所の判断に照らし合わせた事例ごとのポイントを弁護士と確認し、争うか和解するかなどの方針を決めていきましょう。
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