電車で痴漢をしてしまい逮捕されたら弁護士にご相談ください
1 電車で痴漢をしてしまった場合の流れ
電車内で痴漢をしたら、どのような刑事手続の流れになるのでしょうか?
⑴ 駅員に通報される
まず、被害に気がついた被害者や目撃者により、駅員に通報されるケースが多数です。
その場で目撃者に取り押さえられる可能性もあります。
現行犯逮捕は民間人でもできるので、この時点で逮捕が成立します。
⑵ 駅員室に連れて行かれる
痴漢して取り押さえられたら、多くの場合、そのまま駅員室に連れて行かれます。
⑶ 警察を呼ばれる
駅員室に連れて行かれたら、すぐに警察を呼ばれるでしょう。
⑷ 警察に連れて行かれる
警察が到着したら、多くの場合、そのまま警察署に連れて行かれます。
多くの場合、この段階では任意同行です。
警察署についてからも、反省して痴漢の事実を素直に認め、同種の前科や前歴がなく、住居、家族、勤務先など身元がはっきりしているケースでは、逮捕されずに任意の取調べを受け、以後、在宅事件となることが多いでしょう。
しかし、任意同行後、否認したり、同種前科前歴が発覚したり、身元がはっきりしない状態であったりしたケースでは警察署内で逮捕される場合もあります。
2 痴漢したときに成立する犯罪
痴漢をすると、一般的には「迷惑防止条例違反」となります。
迷惑防止条例は、暴力行為やわいせつ行為等の迷惑行為を禁止する条例です。
東京都の迷惑防止条例違反の場合、刑罰は6か月以下(常習犯は1年以下)の懲役刑または50万円以下(常習犯は100万円以下)の罰金刑です(同条例5条1項1号、8条1項2号、同8項)。
痴漢行為が悪質な場合には「不同意わいせつ罪(旧:強制わいせつ罪)」が成立する可能性もあります。
不同意わいせつ罪の刑罰は、6か月以上10年以下の懲役刑です(刑法176条)。
(なお、2025年6月1日からは懲役と禁固が一本化され拘禁刑となります。)
3 逮捕後の流れ
逮捕後の流れには、「勾留」されるかされないかによる違いがあります。
勾留とは、逮捕後引き続いて行われる身柄拘束です。
被疑者を逮捕・勾留する捜査方法を「身柄捜査」、逮捕・勾留しない捜査方法を「在宅捜査」といいます。
以下でそれぞれの流れをみていきましょう。
⑴ 身柄捜査の場合
- 逮捕後72時間以内に勾留される
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逮捕されると48時間以内に検察官のもとに送られ、その後24時間以内(かつ逮捕から72時間以内)に勾留請求されます。
裁判官が勾留を認めると10日間身柄が拘束され、勾留中は、警察、検察の捜査官や検事から取り調べなどを受けます。
生活は留置場内となり、自宅に帰ることはできません。
- 勾留延長
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勾留期間は10日間ですが、捜査に必要な場合にはさらに10日間延長される可能性があります。
逮捕後勾留満期になるまでの期間は、最大23日間です。
- 起訴・不起訴の決定
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勾留満期までに、検察官は被疑者を起訴するか不起訴にするかを決定しなければなりません。
このとき不起訴になったらすぐに釈放されて自宅に戻ることができますが、起訴されると刑事裁判になります。
「略式起訴」という簡単な裁判となった場合には罰金を払って自宅に戻ることができますが、「正式起訴」になったらそのまま身柄拘束されて、公開法廷における裁きにかけられます。
略式起訴になるのは被疑者が罪を認めていて、罰金刑を適用するのが相当と検察官が判断したケース、正式起訴はそれ以外のケースです。
否認している場合や悪質で懲役刑を適用すべきと検察官が判断したケースでは通常裁判となります。
また略式請求となって罰金を払って終了した場合にも、前科はつきます。
- 身柄捜査になった場合の注意点
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身柄捜査になると、長期間、外に出ることができません。
会社員の方は無断欠勤が続くことによって解雇のリスクが発生しますし、学生の場合でも無断欠席が続く結果学校に痴漢行為により逮捕・勾留されていることが発覚してしまい退学になる恐れが発生します。
そうならないためには、早期に身柄を解放してもらう必要があります。
⑵ 在宅捜査の場合
- 身柄拘束されない
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在宅捜査となる場合には、最初から逮捕されないか、逮捕されても勾留はされません。
家に戻って普通どおりに生活を送ることも可能です。
監視などもつきません。
- 捜査が進められる
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釈放されても痴漢事件の捜査自体は継続しているので、捜査は進められます。
警察での捜査により証拠の収集等が済んだら、事件が検察に送られ検察官から呼び出しを受けて取り調べを受けることとなります。
- 起訴・不起訴の決定
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検察官が被疑者を起訴するか不起訴にするか決定します。
不起訴になったらそのまま何も起こりません。
事件としては終了するのでその後蒸し返される危険は基本的になくなります。
起訴される場合、略式裁判なら自宅宛に届く通知に従って罰金を支払えば手続きが終了します。
通常裁判になった場合には公開法廷で裁きを受けるので、裁判のたびに裁判所に行く必要がありますし、最終的に懲役刑を受ける可能性もあります。
- 在宅捜査の場合の注意点
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在宅捜査の場合、家で普通に過ごせるので解雇や退学などの危険は小さくなります。
ただし、捜査に期間制限がないので、処分決定までに数か月から数年がかかってしまうケースも少なくありません。
被疑者としては不安定な立場に立たされてしまいます。
4 電車の痴漢で逮捕された場合の弁護方法
電車内で痴漢をして逮捕されたら、弁護士は以下のような方法で弁護活動を行い、早期釈放を目指します。
⑴ 被害者との示談
痴漢で逮捕されたときには被害者との示談が非常に重要です。
示談が成立すれば処分を大幅に軽くしてもらえる可能性が高いからです。
被疑者本人が被害者と話し合って示談するのは現実的に困難ですが、弁護士であれば被疑者の代理人として被害者と示談交渉を進めることも可能です。
支払える範囲の妥当な示談金額で話をまとめ、検察官に報告をするとともに不起訴を申し入れます。
このことにより、勾留満期を待たずに早期の不起訴処分を獲得できる可能性が高くなります。
⑵ 釈放のための弁護活動
示談交渉以外にも、身柄釈放のためさまざまな弁護活動を行います。
まず、逮捕後の勾留請求をしないよう検察に意見するとともに検察官の勾留請求を認めないように裁判官にも意見します。
そして、勾留されてしまった場合には準抗告によって争うことが可能ですし、勾留を一時停止させるための勾留執行停止、勾留を取り消させるための勾留取消請求を行う場合などもあります。
⑶ 再発防止策の検討
痴漢をしてしまう方は、やめたくてもやめられないケースがあるものです。
痴漢行為を繰り返しているとだんだん罪は重くなってしまいます。
その様なことの無いよう再発を防止するための方策を弁護士が一緒になって考えます。
たとえば、どうしても人が多いので痴漢してしまいそうな場合、路線を変えるのも1つです。
ラッシュアワー時を避けて乗車時間をずらすなどの対策も考えられます。
病的に痴漢行為をしてしまってやめられない方は、カウンセリングを受けることで痴漢行為への依存心から脱却できるケースもあります。
このような再発防止策を考え実践していることを検察官に報告することで不起訴処分になる可能性も高まりますし、起訴されてしまった場合でも、被告人に有利な情状として主張することで、実刑を免れるケースもあります。
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