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不動産の共有持分を売却された場合のトラブル解決方法

  • 文責:弁護士 堤信一郎
  • 最終更新日:2025年1月7日

不動産を複数の人が共同で所有することを「共有」といいます。

単独所有の不動産と異なり、共有不動産については、不動産を処分するにあたってさまざまな制約が伴うため、トラブルが生じやすい所有形態であるといえます。

例えば、共有者の一人が共有不動産や共有持分を勝手に処分(売却)してしまった場合には、どのような対応ができるのでしょうか。

今回は、共有不動産が処分・売却されてしまった場合の対処法や、勝手に処分されないための対処法について解説します。

1 共有不動産の売却について

共有不動産を売却する場合には、どのような制約が伴うのでしょうか。

まず、共有持分の売却の場合と、共有不動産全体の売却の場合に分けて説明します。

⑴ 共有者が自由に売却できるのは共有持分だけ

「共有」とは、一つの物を複数の人が共同で所有することをいいます。不動産を複数人で共有する場合には、各共有者には、「共有持分」という割合的な権利が認められています。

例えば、AとBが土地を共有している場合、それぞれの共有持分が等しいとするとAとBはそれぞれ2分の1ずつの割合の共有持分を有していることになります。

この共有持分については、他の共有者から制限を受けることのない完全な権利が認められています。そのため、共有者は、自身の共有持分については自由に売却をすることができます。

しかし、後述するとおり、共有不動産は、その変更行為や管理行為にあたっては他の共有者の同意が必要になるなどさまざまな制約を受けることになります。

不動産を購入する方の多くが、自分で自由に利用することを目的として購入しますので、制約のある共有状態の不動産では共有持分のみの購入を希望する人はほとんどいないでしょう。

そのため、共有持分のみの売却は、現実的には難しいといえます。

⑵ 全体の売却には共有者全員の同意が必要

共有持分については、各共有者が単独で自由に売却することができますが、共有不動産全体を処分する場合には、他の共有者の同意が必要になります。

民法では、共有物の変更行為については共有者全員の同意が必要になり(民法251条)、共有物の管理行為については共有者の持ち分に応じてその過半数の同意が必要になります(民法252条)。

共有物の変更行為とは、土地を売却したり、建物を増改築したり、畑を宅地に変更するなどの行為をいいます。また、共有物の管理行為とは、共有不動産を第三者に貸し出すなどの行為をいいます。

このように、共有不動産全体を売却するためには、共有者全員の同意が必要になりますので、共有者単独で行うことはできません。

2 共有持分を売却されたらどう対処すべきか

共有者によって共有持分が売却されてしまうと、他の共有者は、全くの他人である第三者と当該不動産を共有しなければならなくなります。

共有者が家族や親族であれば、共有不動産を処分することになったとしても気軽に相談をすることができますが、共有者が第三者となるとそうはいきません。

共有者によって共有持分を売却された場合には、他の共有者としてはどのような対処をすればよいのでしょうか。

共有持分の売却は、共有者が自由に行うことができる行為ですので、それ自体を無効にすることはできません。

そのため、共有持分が第三者に渡ることによる不都合性を解消するためには、以下のような方法を検討することになります。

⑴ 共有持分を自分で買い戻す

共有持分を購入した人(業者)から共有者が共有持分を買い戻すという方法があります。

共有持分を買い戻すことができれば、第三者との共有状態を解消することができますし、共有持分によっては、単独所有の状態にすることも可能になります。

しかし、共有持分を買い戻すためには、共有持分の購入者と話し合いをして、双方が合意しなければ行うことはできません。勝手に共有持分を売却されたからといって、強制的に買い戻すことはできませんので注意が必要です。

共有持分の購入者は、多額の費用を投入し、税金の負担をしていますので、共有持分を買い戻すためには、共有持分の購入者が購入した金額よりも高額な金額でなければ応じてくれないことが多いでしょう。

⑵ 自分の持ち分も売却する

共有持分を買い戻すのではなく、自分の共有持分も一緒に売却してしまうという方法もあります。

共有持分のみを購入するのは、多くの場合は、個人ではなく不動産業者など不動産の買い取りを専門に扱っている業者が多いです。

共有持分を購入した不動産業者としても共有持分だけでは、当該不動産を自由に利用・処分することができませんので、他の共有者の共有持分の買い取りについても検討していることがあります。

そこで、共有持分の購入者(業者)に対して、自己の共有持ち分の売却も打診してみるとよいでしょう。

金額次第にはなりますが、多くのケースでは売却に応じてくれるでしょう。

3 勝手に売却されないための対処法

共有持分を売却されると第三者との共有状態になりますので、様々なトラブルが生じる可能性があります。

そのため、共有不動産を持っている方やこれから共有状態になるかもしれないという方は、以下のような対処法をとるとよいでしょう。

⑴ 共有状態にしない

そもそも「不動産を共有状態にしない」ということが、トラブル回避にとって最も有効な手段です。

不動産の共有は、多くのケースでは、遺産分割をきっかけに生じることになります。被相続人が死亡すると遺産に含まれる不動産は、相続人全員の共有状態となります。

共有状態を解消するためには、相続人の一人が当該不動産を取得して単独所有にすることが大切です。

共有状態のまま放置していると、共有者に相続が発生するなどして、当該不動産の共有者がどんどん増えていってしまいます。共有者が増えれば増えるほど不動産を管理処分することが難しくなってきますので、早い段階で共有状態を解消することが重要です。

⑵ 共有者全員で売却する

当該不動産を利用する予定がないという場合には、共有者全員で当該不動産を売却することで共有状態を解消することができます。

共有持分だけを売却する場合に比べて、共有不動産全体を売却する方がより高値で売ることができます。共有不動産を売却後は、売却代金を共有持分に応じて分配すればよいので、売却後の処理も非常に簡単です。

しかし、共有不動産の売却には、共有者全員の同意が必要になりますので、一人でも共有不動産の売却に反対している人がいれば、この方法はとることができません。

⑶ 共有物分割請求をする

共有物分割請求とは、裁判所を通じて共有状態の解消を行う方法です。

共有者同士の話し合いをしても、共有状態の解消ができないという場合には、最終的に裁判所に共有物分割請求訴訟を提起、その後競売を経て売却代金の分配を受けることによって、共有状態の解消を図ります。

共有分割請求について詳しくはこちらをご覧ください。

⑷ 共有持分の放棄をする

共有状態をめぐるトラブルに巻き込まれるのが面倒だという場合には、自分の共有持分を放棄するという方法もあります。

共有持分を放棄すると、放棄された共有持分は、他の共有者に帰属することになります(民法255条)。

共有者が複数いる場合には、共有持分の割合に従って放棄された共有持分が帰属することになります。

ただし、共有持分の放棄は、税法上は贈与とみなされ、他の共有者に対して贈与税が課税されることになります。

勝手に放棄をした結果、他の共有者に高額な贈与税が課税される可能性もありますので、共有持分の放棄をする場合には、事前に連絡をしておくことをおすすめします。

4 まとめ

不動産を共有している場合には、さまざまな制約が伴う結果、共有者同士でトラブルが生じることがあります。

そのようなトラブルを回避するためには、できるだけ早期に共有状態を解消する必要があります。

共有状態の解消には様々な方法がありますので、共有不動産の問題でお悩みの方は、一度弁護士に相談をしてみるとよいでしょう。

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